調布白菊幼稚園

当たり前に見えることにも、こだわりや配慮がつまっている。

力強さを感じさせる石塀を進むと、そこには自然土が敷きつめられた美しい園庭が。「こんにちは！」と大きな声で挨拶してくれる子どもたちの姿に、心がなごみます。
「幼児教育にゴールはない」と、時代と社会に向き合ってきた調布白菊幼稚園。 
正解さがしが難しくても、自然体で取り組むことを大切にしています。
 

Education Story

多少のすり傷は子どもの勲章
砂にまいた水のように子どもは吸収する
 

「特別なことは何もしてなくて。ただ、自分の体験で得た、失敗と楽しかったことが詰まっているだけだよ」

調布市幼稚園協会会長でもある吉田園長先生。少年のように無邪気な一面が人を惹きつけます。

前職はデザイナーだった園長先生がデザインした体操着は、形も色の組み合わせも、とてもおしゃれ。木々の緑や大地を連想させる、グリーンの体操着とブラウンの帽子を着て、泥んこになって遊ぶ子どもたちの姿は、子どもも自然の一部として生きていることを感じさせてくれます。

「小さい頃、最初に遊んだ記憶は園庭の砂場。 一生懸命深く穴を掘って、先に進めなくなるとすごく寂しかったし、ターザンロープから落ちたときはすごく痛かった。どれも鮮明に覚えてるから、きっと最高に楽しかったんだよね」 

砂場から「遊び」が広がっていった自身の体験があるからこそ、園庭は冒険と発見を繰り返す最高の遊び場だと知っています。 

「転んで痛かったら、次はさけて走ればいい」と、地面はあえてデコボコのまま。 砂場は思い切り穴を掘れるよう、1ｍもの深さが。 少年時代の「遊びの原点」から得た知恵が散りばめられています。
 

子どもたちも先生たちも、宝物
だから磨き続けていきたい
 

55年もの歴史をもつ、調布白菊幼稚園。日本ではまだハロウィンが知られていなかった数十年前から、園の行事に取り入れてきました。当初は周囲からの逆風を受けましたが、負けずに試行錯誤を繰り返し、理解を深めてもらう努力をし続けたといいます。こうした事実がつねに地域に愛されている理由の一つと言えるでしょう。

また、調布白菊幼稚園は、先生たちの心のケアを重視しています。待遇を充実させるだけでなく、在籍する40名ほどの先生一人ひとりと面談したり、 学期毎に研修を行うなど、働く環境を整えるため尽力しています。 

「どこにいたって、人間関係が100%上手くいくことなんてない。 一人ひとりがちょっとずつ歩み寄って、真ん中を探し続けていくしかないんだよね」

飾り気のない率直な言葉で話す吉田園長先生。真剣に先生たちと向き合い、心の奥に隠された気持ちを見つけようとする姿勢を崩しません。 

新しい文化を先駆けて取り入れてきた背景には、実現のため東奔西走する園長先生の姿があります。子どもたちや先生という宝物を磨き続けるために、着実に、しかも、まるで当然のことのように。

「特別なことなんてしてないよ」

 ありのままであるということも、一つのこだわりなのかもしれません。
 

Work Image

先生たちは残業がほとんどなく、終業時間になると「早く帰ろう！」という空気になるそうです。
また、クリスマスには先生たちが主役となるイベントもあり、幼稚園全体が活気に満ちていました。
子どもたちと泥んこになって遊ぶ一方で、先生たち同士の交流も盛ん。 東京ドーム巨人戦ボックスシートが用意されているそうで、皆さんで野球観戦を楽しむ機会も多い。

1年目の先生は「若い先生が多く分からない事、困った事があった時、小さなことでも確認しやすい環境」だと言います。ベテランの先生は、忙しい中でも丁寧に保育のアドバイスをしてくれるそうで、園を決めたひとつの理由でもあると教えてくれました。